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「ツールやビジネスモデルのブラッシュアップを急がねば」:神戸新聞 大町聡 氏 - DIGIDAY[日本版]

2021年にも、新しいトレンドは生まれ、役目を終えたトレンドは忘れ去られていく――。

DIGIDAY[日本版]がお届けする、2020年・2021年の年末年始企画「IN/OUT 2021」。この企画では、我々が開催してきたさまざまなイベントでお世話になった、日本のブランドおよびパブリッシャーのエグゼクティブたちへ、新しい1年にトレンドイン・トレンドアウトするであろう事象について考えを伺った。

神戸新聞社のデジタル創造本部デジタル推進局で取締役デジタル創造本部長デジタル推進局長を務める大町聡氏の回答は、次のとおりだ。

――2020年を総括すると、どんな1年でしたか?

2020年は新聞、出版、放送など国内パブリッシャーが一斉にDX(デジタルトランスフォーメーション)へ舵をきった年として記憶に残るだろう。

新聞社と関連企業では、リアルイベントが軒並み中止となり、紙面広告や折込広告も激減。放送、出版、旅行、不動産業などへの影響も深刻で、長期低落傾向にあった本業の新聞発行事業をさらに傷つけることになった。宅配中心の一般紙はコロナ関連報道で新規購読が増える明るい側面もあったが、即売頼りのスポーツ紙は、試合中止に加えて都内の多くの駅売店が休店するなど苦戦が続いた。デジタル部門も、プログラマティック広告価格の低落傾向から依然回復していない。コロナ禍に加えてインベントリの急増、データ保護規制など負の要素が多い。

ただ従来の事業モデルが毀損するなかで、相対的に「希望が持てる」のがデジタル部門。変革できなかった既存メディアが、データマーケティングやコンテンツファーストへ少なくない経営リソースを注ぎ込もうとしている。

神戸新聞社のデジタル部門では、プログラマティック広告の単価が落ち込む一方で、コロナ関連報道への関心が高まり、3-4月は過去最高のPVを記録した。3月末にスタートした地域動画プラットフォームのKOBE_TVは、ステイホーム動画やアーティスト支援、セミナーやイベントのオンライン配信業務が急増した。取り組みが遅すぎたかもしれないが、10月に企業変革を目指すDX統括本部をスタートした。

サードパーティCookieの時代が終わりを迎え、プログラマティック広告の限界が見えてきたが、リテンションモデルがコロナ後のパブリッシャーにとって福音となるか。21年が正念場の年となる。

――2021年、必ず押さえておきたいと思う、新しいトレンドは?

パブリッシャー向けにプログラマティック広告の収益向上が期待できる、アドセーフティツールやアドベリツールに注目している。

ブランド力のあるパブリッシャーほどプログラマティック広告のブランド毀損を恐れる。オープンオークションの経路を悪用してガイドライン違反広告やマルウェアが配信されるだけでなくレイテンシへの影響も出てくるかもしれない。パブリッシャーにとって悪意ある広告は悩みの種だ。複雑に構成されたオークション経路から特定の広告を排除するのは困難だが、GeoEdge(ジオエッジ)やAD Lightning(アドライトニング)などブロックツールの精度も上がってきた。ブラックリスト、除外キーワードによる監視だけでなく、AIによる自動検知とブロックがRTBでも効果を上げる。

国内でも視認性の確保が広告価格に直結し、ビューアビリティを高めるためのアドテクツールの効果が徐々に出てきた。視認性予測ツールのBrowsi(ブラウジー)はユーザーのスクロール速度を予測し、ページ下部に最適のタイミングで広告枠を自動生成する。ページ下部のインプレッションを向上させることは、滞在時間や読了率など編集サイドでコンテンツのユーザー体験を高める動機ともなる。

また複雑な経路の抜け穴をすり抜ける不正な広告を排除するために、パブリッシャー側にできることがある。sellers.jsonの実装によって、オープンエクスチェンジの売買でパブリッシャー名を明示し、再販業者の販売経路を健全、透明化する。

1年前はアドセーフティ、アドフラウド対策の必要性は叫ばれても、日本ではコストセンターへの投資という印象が強かった。2021年には確実に収益向上のために取り組まねばならない施策となる。

――2021年、もはや時代遅れと思える、既存のトレンドは?

サードパーティCookieに依存したコンテンツ配信ビジネスをこれから構築することは、もはや理にかなった施策とは言えない。入札経路が既に複雑になっており、やみくもに接続先を増やすこともプラスにはならないだろう。

ポストCookie対策として、CDPで蓄積したファーストパーティデータをもとに、解像度の高いユーザーのペルソナを武器に、広告価値を高める方法がある。

記事の文脈やコンテンツに対するユーザーの嗜好をもとにAIが推定し、広告を配信するコンテクスチュアルマーケティングはパブリッシャーによっては効果的だろう。海外で「コロナ」がブロックワードとなったように、ニュース組織にとってはコンテクストによるマッチングが広告主から忌避される懸念もある。

データ保護ルールに抵触しないアノニマスな共通IDソリューションは、ユーザーの同意が得られる明確なルールが必要だ。またサードパーティCookieの廃止後にパブリッシャーがファーストパーティデータだけで生成する共通IDの価値は低下するかもしれない。膨大なユーザーデータを抱える巨大プラットフォーム以外は。

欧米の新聞社は無料広告モデルに見切りをつけ、ユーザーが体験に対価を支払うサブスクリプションモデルに奔走している。国内では巨大プラットフォームによるユーザーの囲い込みがファーストパーティデータマーケティングをさらに加速する。われわれパブリッシャーにとってプログラマティック広告が「時代遅れ」とならないよう、ツールやビジネスモデルのブラッシュアップを急がなければならない。

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Edited by DIGIDAY[日本版]編集部

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