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何かと話題のDXよりも「SX」を重視すべき2つの理由 - 日経ビジネスオンライン

(写真=PIXTA)

 サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)という言葉がにわかに熱を帯びている。SDGs(持続可能な開発目標)が企業存続の上での一般的な考え方となるのと同じく、ビジネスの成長を兼ね備えた考え方として今後浸透していくことは間違いない。知ったかぶりはできないキーワードだ。

サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)の意味

 「サステナビリティ・トランスフォーメーション(以下SX)」という新しい言葉は、経済産業省が設置した「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会」の取り組みで提唱され、2020年8月発行の中間とりまとめの中で初めて展開された。

 中間報告でありながら、70ページを超える大作リポートであるためここに全文を載せることはできない。その中からSXに関する定義を抜粋する。

(1)企業としてのサステナビリティを高める

(2)社会要請などの不確実性に備え、企業の中長期的なリスクとオポチュニティの双方を把握し経営に反映する

(3)(1)と(2)を経営の軸として、都度アップデートを行い環境変化への適応を行う

といったものだ。

 まず、(1)だが企業の稼ぐ力をより中・長期的な視点で考え、その上で高めていくことが重要という提言だ。経営者にとってより長い視点で物事を考えるというのは至極当然。だが、ビジネスのスピードが上がった現代において、1年や四半期よりも短いスパンでPDCAが回される。そうしたなかで立ち返るべき長期的戦略は重要であるのは間違いないだろう。

 また、目下課題となっているコロナに限った話ではない。環境や顧客嗜好が激変する現代。昨日支持されていたサービスが明日には支持されないかもしれない。そうした状況に備えることができるビジネスを模索することが求められる。今までは見えないリスクに対して備えることはコストと考えられ、最適化が求められていた。だが、今リスク対策を怠る企業の明日は暗いだろう。

 (2)は、多様なリスクや環境変化に備えた自社のビジネスがどう変化するのか考え、それを経営指針とすベきだ、という提言だ。

 目下、認知から浸透フェイズに入ってきたSDGs。その観点から見た時、ビジネスが社会にとってのサステナビリティを失わせるものであったらどうだろうか。短期的には優良なビジネスであったとしても中長期的に継続することは難しいと言える。数字では追うことが難しい社会的な流れから取り残された企業は、あるタイミングで継続が難しくなる時期がくる。しかも、今後は今以上に潮目は読みにくくなる。

 例えば、温暖化問題によりCO2排出の直接的な要因として指摘される石油業界。脱炭素が加速され、代替エネルギーへの置き換えや転換が今後急速に進むといわれている。短期的には石油文化は継続するのは間違いないが、多くのアナリストが安泰とは言っていない。米運用大手ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント(GSAM)は、企業のCO2排出量を経営上のリスクと分析。運用目標の指数平均比で25%以上少なくなるよう選別するとも宣言している。

 そうした中長期的にリスクと定義されてしまうビジネスを継続的に続けることはできないだろう。現在の自社が持つ優位性を生かしてビジネスを再定義することが、これからの世界観として求められている。これまで丁寧に行ってきた、ブランディングやロビー活動にコストをかける時代は終わった。

 ガバナンスを再定義し、製油精製技術や掘削技術などの横展開を考えなければいけないのだ。はたまたガソリンスタンドを水素や電気ステーションにし、流通網と広域マーケティングが可能な強みを活用し、ブルーオーシャンを開拓すべきなのかもしれない。

 そうした既存のビジネスからの脱却こそが、SX的な視点としてこれから求められている。

(写真=PIXTA)

 (3)については、単なる環境変化への適合がしやすいビジネスモデルを構築し対応するだけでは終わらない。その都度アップデートを行うことがこれからのビジネスの必須事項だと定義している。

 企業の創業ストーリーと画期的なビジネスはセットにして語られることが多い。だが、その成功体験に固執し続けることで失墜した企業も非常に多い。

 ジム・コリンズが執筆した、名著『ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階』の中にも類似した視点がある。本書は5段階に会社が衰退するまでのプロセスを定義しているが、その3段階目として「リスクと問題の否認」という解説がある。

 企業の状況が苦境に立たされると、状況の後付けや誤認状況の正当化が行われる。慢性的な社会と会社ニーズのかい離が起き業績が低迷。一発逆転を願って会社に変化を起こそうとしても、時すでに遅し。結果として、もともと持っていた会社のストロングポイントを失い、会社が陳腐化する。時代遅れで済めばまだ良いが、大型化した船は小さな穴で沈没するだけだ。そうした残念な例として挙げられているのは、ヒューレット・パッカード(HP)、モトローラ、ゼニスなどだ。

 成功体験に固執せずに、会社的なサステナビリティと社会的なサステナビリティを擦り合わせていく。改編可能な中長期的なビジョンを作っていくことがSXとして求められる定義なのである。

DXよりもSXが踏みこんで重視されている訳

 デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉もまだまだ流動的な意味を持ち、一部ではIT化やAI(人工知能)導入を進めればDXになると勘違いされている側面もある。おそらくSXという言葉や実際の意味も今後5~10年で変化が起きるのは間違いないだろう。現時点においてDXよりもSXの方が重視すべき理由が2つある。

 まず、DXはデジタル技術やテクノロジーを用いて既存ビジネスをより効率化や価値のあるものに高めるという考え方である。だが、たとえデジタル技術が発展したとして、既存ビジネスが陳腐化したり社会的な継続性が求められないものになってしまったりしたら、そもそもサステナビリティを発揮することができない。そのためSXがベースにあった上でのDXの導入が求められていると理解した方が良いだろう。

 またDXの導入は短期的なビジネスの優位性は獲得できるかもしれないが、中長期的には各社が似たサービスを導入すれば差別化が行えないというのも事実である。(もちろん、先行優位の獲得やユーザーを囲い込むデータベースなどを構築し、他社にはできないサービスを作るという方法もあるが)単にビジネスをDXで置き換えるのではなく、そもそもの自社が持つ優位性を見いだし、中長期的な戦略を立てることは会社の優位性を維持することにつながる。

 中小企業であれ、大企業であれ社会的にサステナビリティを求められる時代がもう目の前までやってきている。だが、社会的サステナビリティを追求するあまり、自社のビジネスが立ちゆかなくなってしまっては意味がない。

 まずは、自社のビジネスという円と社会的な観点という円。その重なる場所を作り、そこを広げていくことからSXは始まっていくのではないだろうか。

文/宇佐美フィオナ

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