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社長になりたい!に応える“サーチファンド”って何? - nhk.or.jp

社長になりたい!に応える“サーチファンド”って何?

「いつか社長になりたい」「会社を経営したい」
こんな夢をもつ若者や中堅のビジネスパーソンの間で新たなキャリアの選択肢として「サーチファンド」という仕組みが注目されています。
多くの中小企業が後継者不足に直面する中、迫り来る“大廃業時代”への処方箋の1つとしても期待が集まるサーチファンド。いったいどんな仕組みなのか取材しました。(経済部記者 加藤ニール)

サーチファンドに熱視線

ことし7月下旬、私が訪れたのは都内で開かれたサーチファンドの説明会。サーチファンドを通じて企業の事業承継に取り組む投資会社が主催しました。

平日の夜に開かれた説明会には経営者を目指すおよそ20人が参加。
商社や金融機関、メーカーなどに勤める20代から40代までのビジネスパーソンです。

このうち商社に勤める30代の男性は、参加した理由について、こう語っていました。

商社に勤める30代男性
「経営者になりたい夢があるが、日本企業にはまだまだ年功序列が残っていて、どうしても時間がかかる。人生は1回しかないので、自分で環境を変えたいと考えた」

主催した投資会社によりますと、経営者の候補を10人募集したところ、応募はその30倍にのぼったそうです。

サーチファンドとは?

サーチファンドは1984年にアメリカのスタンフォード大学ビジネススクールで生まれた仕組みです。ゼロから起業するのではなく、既存の企業を買収し、経営者になるというアントレプレナーシップの形として欧米などに広がっています。

その仕組みです。

まず、社長になりたい人=サーチャーが、投資会社から出資を得てファンドを組成。

その資金を元手に自分が経営したい会社を探す(サーチ)ところから活動は始まります。
会社探しの期間は半年から2年が目安とされています。

候補となる会社が見つかると、サーチャーはその会社を買収するための資金を投資会社に支援してもらい、買収によって会社の事業を承継。会社の社長として企業価値の向上に取り組みます。

経営の立て直しに成功すれば、投資会社は出資に応じたリターンを確保できるほか、出資分を会社に買い取ってもらったり、他の会社に売却したりして売却益を得ることもできます。

説明会を開いた「サーチファンド・ジャパン」の伊藤公健社長は、こう話します。

伊藤社長
「経営者志望の人が主体となり企業探しから買収までを行うので、後継者不足に悩む中小企業にとっても事業を引き継ぐ経営者候補の顔が見えて、次を任せられる人物か見極めることができる。このため中小企業側の関心も高まっている」

サーチファンドで念願の社長に

この仕組みで実際に社長になった人がいると聞いて、私は山梨県に向かいました。

大屋貴史さん(46)
ことし1月から甲府市にある住宅リフォーム会社の社長を務めています。

かつては大手広告代理店や経営コンサルタントなどでキャリアを積んだということですが、なぜ経営者の道を志すようになったのか。
大屋さんは、次のように語ります。

大屋社長
「コンサルとして企業再生をサポートする仕事をしていたが、いつか自分も経営者に挑戦したいと思っていた。自分はゼロから新しいビジネスをつくる起業家タイプではなく、なかなか機会はなかったが、サーチファンドの存在を知り、これなら実現できるんじゃないかと手をあげた」

コンサルの仕事を辞め、投資会社の支援を受けてサーチャーとして本格的に企業探しを始めたのは去年5月。事業承継の候補として地元・山梨の企業を中心に30社余りに絞り込み、精査した結果、リフォーム会社の将来性に可能性を感じたといいます。

リフォーム会社側との交渉や買収に向けた手続きは投資会社がサポート。

さらに投資会社から買収ファンドへの資金支援を得て、リフォーム会社の株式を100%取得。企業探しを始めてから8か月後に従業員およそ30人の会社のトップに就任しました。

社長としてどう取り組む?

リフォーム会社は山梨県内に現在3店舗を展開していますが、大屋さんは5年後に10店舗にまで拡大したいと考えています。

ねらいは移住者のリノベーション需要の取り込みです。
コロナ禍をきっかけにリモートワークが広がり、首都圏に近く、自然豊かな山梨県に移住を希望する人が増えています。このため古民家などのリノベーションなどに力を入れ、移住者のニーズに対応できるようにしたいと考えています。

大屋社長
「空き家や高齢化などの課題はありますが、山梨だからこそできる家づくりを提案したい。ゆくゆくは地域の活性化を担えるようになりたい」

サーチファンド なぜ広がらなかったのか

ここで紹介したように、サーチファンドの仕組みを活用すると、企業探しの段階から資金的なサポートが得られるほか、買収資金の調達や経営のアドバイスなどの支援も受けることができます。

「社長になりたい」と考える人にはメリットが大きい制度ではあります。

ただ、1980年代にアメリカで始まったサーチファンドがなぜ、これまで日本で広がらなかったのかという疑問が残ります。

サーチファンドの関係者に聞くと、主に3つの理由があるそうです。

【投資ファンドが経営に関わることへの中小企業のアレルギー】
短期的な収益をねらうあまり、長期的な視野で経営するという視点が欠けているのではないかという警戒感が根強かった。

【資金の出し手側にも手厚い支援が求められる】
資金の出し手も、サーチャーへの手厚い支援が求められ、企業探しに時間がかかるサーチファンドのビジネスに本格的に乗り出そうとはしなかった。

【そもそも人材がいない】
みずからのアイデアで起業する人はいても、既存の企業に乗り込んで社長を務めたいという人材が、そもそも十分にいなかった。

大廃業時代の処方箋となるか

最近、こうした事情には変化もみられます。
地方銀行みずから専門の投資会社を設立したり、自治体が補助制度を設けたりして、サーチファンドによる事業承継を後押しする動きが出ています。

その背景にあるのが深刻化する中小企業の後継者不足の問題です。中小企業庁によると、2025年までに70歳を超える高齢の経営者は245万人に上り、この半数の127万人の後継者が未定だということです。経営者がこのまま廃業すると、中小企業などで働く650万人の雇用が失われるという試算も出ています。

こうした中で、意欲のある若者や経験豊富なビジネスパーソンと後継者不足に悩む中小企業をマッチングさせる仕組みとしてサーチファンドへの期待が高まっています。

ただ、社長になりたいという夢を実現するのは簡単ではありません。経営者としての適性があるかどうか、そして会社を承継し、立て直す手腕があるかどうかは、投資会社に厳しく審査されます。

また、事業承継したい企業を自分自身で探す必要があり、相手が見つからなければ、それだけ経営に参画するまでに時間がかかってしまうことになります。

こうした課題を抱えながらも、大廃業時代の処方箋として、そして新たなキャリアの選択肢として、サーチファンドの仕組みが日本で広がるのか注目です。

経済部記者
加藤ニール
平成22年入局
静岡局、大阪局を経て現所属
現在、金融業界を担当

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