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ジェンダー平等を進めるための「HOW」が足りない。日本企業に必要なアプローチとは - Business Insider Japan

只松観智子さんと大崎麻子さん

撮影:柳原久子

持続可能な社会の実現のために、急務とされる多様性やジェンダー平等の推進。 2021年10月に行われた衆議院選挙でもジェンダー平等が大きな論点となったことは記憶に新しい。また、ビジネスシーンでも経団連が掲げる目標「2030年までに女性役員が占める割合を30%以上」に向け、各企業が具体的なアクションを求められている。ジェンダーギャップ是正に向けたムーブメントは確実に広がってきていると言えるだろう。

そんななか、ジェンダー平等を推進するコンサルティング会社 Think Impactsが設立された。 代表取締役は、女性役員比率の向上を目指す30% Club Japanの創設者でもある只松観智子さん。

設立の背景や世界の動き、企業、そして個人がとるべきアクションは何か。只松さんと、同社アドバイザーでジェンダー専門家の大崎麻子さんに聞いた。

経営コンサルタントの視点でジェンダー平等を実現するアプローチを提示

Think Impacts 代表取締役 只松観智子さん

Think Impacts 代表取締役 只松観智子さん。2020年11月開催の「MASHING UP Conference vol.4」でも、30% Club Japan の活動の意義と取り組み内容、また社会にもたらすインパクトを語った。

撮影:柳原久子

もともと経営コンサルタントとしてキャリアを積んでいた只松さん。社会課題を解決するコンサルティングを行う中で、多くの社会課題の根底にはジェンダー格差があるという気づきから、ジェンダー平等への関心が高まり、30% Club Japanを立ち上げるに至った。

さらに同社を立ち上げた理由について、「経営コンサルタントとしての長年の経験と、社会課題の解決を目的とするさまざまな活動を通して、ジェンダー平等を進めるうえでのアプローチの全体像を自分の中で描くことができた。それを実現させるためには、活動の場を広げていくことが必要と考え、独立し、Think Impactsを設立した」と語る。

企業に対してのコンサルティングに加え、社会的価値創造活動として女性起業家や、ジェンダー平等を目的としたNPOの経営支援をプロボノで行っています。これは次世代の女性リーダーの発掘と育成を主な目的としています。ダイバーシティ経営がうまく回り始めると、女性リーダーのニーズが必ず高まります。そのニーズとサプライのサイクルをしっかりと回していく仕組みを構築することも、Think Impactsのミッションの一つです」(只松さん)

日本ではこれまで数値目標は掲げるものの、それにどう取り組むのかという“HOW”の指針が示されてこなかった。大崎さんは、そのことが日本が遅れている要因の一つだと指摘すると同時に、「只松さんはその“HOW”を提示し、組織の仕組みを変え、社会に変化をもたらすことができるはず」と期待を寄せる。

世界で拡大する人権デューデリジェンスの取り組み

大崎麻子さん

Think Impactsでアドバイザーを務める大崎麻子さん。人権や女性のエンパワーメントの視点から、組織のジェンダー平等推進にアプローチする。

撮影:柳原久子

大崎さんはジェンダー専門家として、各方面からダイバーシティやジェンダー平等を推進するメリットをよく聞かれるというが、「もはやメリット云々の話ではなくなっている」と語る。 その背景には、ビジネスと人権をめぐる世界情勢がある。

人権は、ESG(環境・社会・ガバナンス)のSにおいての主要な要素。今、欧米諸国を中心に人権に対する意識は急速に高まり、人権デューデリジェンスの取り組みが広がっている。

人権デューデリジェンスとは、企業が事業活動をするうえでの人権侵害のリスクを把握し予防や軽減のために対処すること。そして、そこにはジェンダーの視点が求められている。欧州や米国では、この人権デューデリジェンスを企業に義務付ける法律が相次いで策定されているのだ。

「日本企業は、自社の供給網に対する取り組みを加速していますが、忘れてはならないのが、日本企業はサプライヤーでもあるという点です。欧米諸国と取引がある場合は、人権に配慮しているかを問われ、女性差別的な扱いが無いか、セクシャルハラスメント対策はどうなっているかといった情報開示が求められる。それに対応できなければ取引ができなくなることもあり得るのです。

ジェンダー平等の推進は、企業がどう生き残るかという経営問題であり、持続的な成長を実現するための前提条件ともいえるでしょう」(大崎さん)

集合知の向上とイノベーションの創造を促進させるために

ジェンダー平等・ダイバーシティはもはや、企業経営における喫緊の課題。 世界では2000年代に入り、それまで国連や国際NGOが取り組んできた人権や環境に対する課題に、企業・団体もエンゲージし、ともに取り組むことで効果をあげてきたという流れがある。

Think Impactsも、只松さんと大崎さんがタッグを組むことでその両方の視点を備える。

ビジネスと、人権やジェンダー平等などの社会課題の視点が融合することで化学反応が起き、違った角度で解決策を考えることができています。まったく異なる領域の人材が、同じ目的に向かって自分たちの知識や経験を持ち合って解決策を考えていくことは本当に有効だと、私自身がダイバーシティの効果を実感しています」(只松さん)

そんなThink Impactsが目指すのは、「集合知の向上とイノベーションの創造に不可欠なジェンダー平等の実現」。

「現代社会が直面する課題の多くは、極めて複雑でかつ不確定要素が非常に多い。成功の法則が確立されていないため、自分で答えを見つけなければなりません。個人個人は“優秀”だったとしても、同じ視点を持つ者同士が集まると物事の一部しか捉えられず、盲点が大きくなってしまい、問題の全体像を捉えられない。賢者の集団が愚者の集団になってしまう。

複雑な問題を解決するには、個人の優秀さだけではなく、組織としての優秀さを重視するようシフトするべきです。そのためには多様な視点を持つ個人から成る組織をつくり、問題の全体像をしっかりと把握した上で議論し判断することが求められます。これを組織のインテリジェンス『集合知』と言います。

そして、さまざまな視点がぶつかることで新しいアイデアが生まれ、イノベーションが創造される。多様な視点、経験、スキルを持つ個人が、自分のポテンシャルをフルに発揮できる環境があれば、イノベーションを生み出す力はもっと大きくなっていくでしょう」(只松さん)

Think Impactsのイメージ

Think Impactsの掲げるビジョン

画像提供:Think Impacts

そこで、Think Impactsでは、3つの柱で事業を展開している。

1つ目は、企業のダイバーシティ経営をグローバルレベルに押し上げること。

グローバルスタンダートであるWEPs(女性のエンパワーメント原則:企業がジェンダー平等を経営の核に位置づけ、自主的に取り組むための行動指針)の実装支援を通じて、企業に解決策を提示します。さらに、日本が弱いと指摘されるジェンダー視点も含めた人権デューデリジェンスへの取り組みや、取締役会の改革も支援。意思決定を行う層に多様性がなければ、正しい判断はできないので、トップの多様性には特にフォーカスしています」(只松さん)

2つ目は、マルチステークホルダーアプローチで、3つ目が、女性リーダーの育成と人材紹介。

「今、圧倒的に女性のリーダーが不足しています。人材紹介では、クライアント企業の求める人材をただ紹介するのでなく、組織のパーパス、ビジョン、ミッションから逆算し、現状を踏まえ、適した女性リーダーをご提案します。何となく人材を探すと、どうしてもこれまでのリーダー像や条件に引っ張られ、結局、同質の人材が集まってしまいます。この傾向は特に取締役会や企業のトップ層で顕著です。

どのような組織でありたいのか、そのためには、どのような意思決定機関が必要なのかを改めて明確にし、女性リーダーをリクルーティングすることが重要です」(只松さん)

個人の能力を発揮できない、アンコンシャスバイアスの弊害

語り合う只松観智子さんと大崎麻子さん

撮影:柳原久子

只松さんは、「ジェンダー平等の究極の目的は、全ての人たちが、そのポテンシャルをフルに発揮できる環境をつくること」と考える。そして、その際に障壁となるのがアンコンシャスバイアスだと指摘する。

「アンコンシャスバイアスは周りからの不公平な待遇という点に注目が集まりがちですが、私がダントツ一番に問題だと考えるのは、自分自身の能力に自ら無意識に制限をかけ、本来持っているポテンシャルをフルに発揮できなくさせてしまう点です。今の日本は、人口の半分がその能力を十分発揮できない状況にあります。女性がポテンシャルをフルに発揮できるようになれば、以前から低いと問題視されている日本の労働生産性は一気に改善するでしょう」(只松さん)

それに対処するにはどうすれば良いのか。

心理的安全性を担保することが重要。私たちは自分たちと同じような人たちが一定数いるだけで安心を感じます。重要なのはその数。少なくともクリティカルマス(30%程度とされる)は必要です。また、リーダーシップの形も重要。高圧的で自分の意見を押し付けるようなリーダーではなく、チームメンバーが自分の意見を安心して言いあえる環境をつくれるリーダーが求められます。

そのようなチームは、アンコンシャスバイアスのネガティブな影響が低下し、メンバーの自信が高まり、それぞれが持っている知識や経験を積極的に共有することができるようになります。結果として集合知が高まり、チームパフォーマンスも向上するでしょう」(只松さん)

変革のために個人がとるべきアクションとは

最後に、社会を変えていくために個人ができることを聞くと、「知ること」「考えること」「声を上げて行動すること」という3つの答えが返ってきた。

「自分自身でしっかりと考える力をつけること。無意識に不可能と思ってしまっていることも、なぜそう思うのか、どうすればできるのか、しっかりと考えることです。そうして、問題解決力を身に付けてもらいたい」(只松さん)

大崎さんは「世界の動きを知ることも大事」と語る。

「世界というと、欧米諸国を思い浮かべるかもしれませんが、今、ジェンダー平等に向けて大きく前進しているのはアジア諸国です。WEPs署名企業が急増しているのはもちろんのこと、WEPsの取組みの成果指標や情報開示項目の枠組み作りのハブになっているのもアジアです。女性・女の子のエンパワメントに関しては、草の根から国レベルまで、民間企業とNGOの協働も盛んです。そんな世界の動きや、日本の動きを知ること。そして、その変革に積極的に関わっていくことが大事です。

今、若い女性たちが中心になって行動を起こし、政府や企業を動かしています。第5次男⼥共同参画基本計画には就活セクハラへの対応が盛り込まれましたし、生理の貧困や痴漢への対策要求など、ユースが声をあげたことで政策にインパクトを与えている事例もあります。声をあげることで変えられることがある。自分たちが働く環境、健康に暮らす環境をどうつくっていくかに目を向けて、しっかり関与していってほしいですね」(大崎さん)

MASHING UPより転載(2021年11月15日公開


(文・上妻靖子)

上妻靖子:編集・ライター。大学卒業後に上京し、雑誌編集や広告制作を経験した後、2017年フリーランスに。会報誌や社内報、Webのライティングを中心に活動中。インタビューが好き。大阪出身で、得意料理はお好み焼き。

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