変化を愛し、明日のために生きる経営哲学
『日経ビジネス』は経済誌としての50年以上にわたる歴史の中で数多くの名経営者や元宰相などをインタビューしてきた。今では鬼籍に入って話を聞くことのできない方や現役を退いた方を中心に、時代を体現した“寵児”たちのインタビュー記事を再掲する。
(注)記事中の役職、略歴は掲載当時のものです。
1999年10月25日号より
官僚主義を排し、変化を愛し、変化がもたらすチャンスに胸躍らす企業――1981年にゼネラル・エレクトリック(GE)の最高経営責任者に就任し、伝統企業に活力を与え続けたジャック・ウェルチ氏が掲げる「21世紀の良い会社」像だ。「インターネットが既存のあらゆるビジネスモデルを破壊する現代において、運命の手綱を手放さないために、自ら変革を引き起こさなければいけない」と主張。「あなたの仕事を破壊せよ」部門を組織してネット時代に合致した事業構造を構築しようとしている。2000年に引退を決めている「最も偉大」な経営者が、ビジネスにかけた情熱のすべてを語った。
(聞き手は本誌編集長、小林 収)
昨日の新聞記事が魚の包装紙になる
ジョン・F・ウェルチ(John F.Welch, Jr.)氏
1935年マサチューセッツ州生まれ、64歳。57年マサチューセッツ大学卒業、60年イリノイ大学博士課程修了(工学博士)後、GEプラスチック事業部に化学エンジニアとして入社。68年プラスチック事業部で32歳という最年少のゼネラルマネジャーに就任し、小さかった同部門を年商4億ドルにまで育てる。77年上席副社長として消費関連製品およびサービス事業セクターを担当。主としてGEの傍流を歩み、企業変革を強烈に主張するため、異端視されてきたが、先代レジナルド・ジョーンズ氏に推薦され、81年会長兼CEOに就任する。ジャックは愛称。
問 かつて活力に溢れた「良い会社」が、経営環境の変化などによって、普通以下の会社になってしまうケースは珍しくありません。ウェルチ会長は最高経営責任者(CEO)に就任して18年にわたり、GEを活性化し続けてきました。持続的な革新を可能にした要因は何でしょうか。
答 どのような賛辞が新聞を飾ろうが、昨日の新聞記事は、明日には魚を包む包装紙になり下がっているかもしれない。この現実を常に念頭に置いておかなければなりません。
過去に対する敬意は大切です。しかし、我々は過去に生きているのではない。明日のために生きる、というのがGEの哲学です。スピードを維持し、官僚主義を排し、変化を愛し、変化がもたらすチャンスに胸躍らす組織。これが私が目指してきた企業像です。
問 過去に強烈な成功体験がある会社ほど、その体験にとらわれ、環境変化に取り残されがちです。常に明日を見据えることの大切さは分かりますが、言うは易しで、実行するのは極めて難しい。
答 GEのやり方についてお話ししましょう。これが唯一の手法だと言うつもりはありません。ただ、常に新たな目標にチャレンジする姿勢がGEの経営の中に組み込まれていることを理解してもらえると思います。
パソコンがオペレーティングシステム(基本ソフト)の上で様々な応用ソフトを動かすように、GEにも様々な事業を効率的に進めていくための統一的なオペレーティングシステム(運営制度)があります。
まず、毎年1月に「イニシアティブ」を決定する。イニシアティブとは、業績伸長の推進力として全社的に取り組むべき最優先の課題を意味します。GEが現在掲げているイニシアティブは「グローバル化」「サービス化」「シックスシグマ活動による品質管理」および「インターネットビジネスの推進」です。前の2つはかれこれ20年近く優先課題として掲げており、96年からシックスシグマを、今年に入ってインターネットを新たに加えました。
決定と同時にイニシアティブは実行に移され、3月に上層部が進捗状況を調べ、4月には各部門が1日を費やし、イニシアティブの実行を中心となって推し進めるのにふさわしい人材を選びます。6月に再び進捗状況を点検し、7月に3年計画の作成、9月に再度、進捗を調べる。この結果をもとに、11月には、一度決めた人事を見直し、翌年1月にイニシアティブの実行に最も功績のあった社員を表彰します。
問 航空機エンジンから金融サービスやテレビ放送(NBC)まで10の各事業、全世界30万人の社員にとって、この4つの優先課題の推進が仕事の最上位の目的となっているのですね。
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