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ディマンド・リスポンスの活用で広がる、電力需給調整の新ビジネス - 経済産業省 資源エネルギー庁

再生可能エネルギー(再エネ)の導入拡大にともない、電力の需給バランスを調整する方法として、ますます注目を集めている「ディマンド・リスポンス(DR)」。これまでのように発電所つまり供給側だけに調整を頼るのではなく、家庭用燃料電池(エネファーム)、蓄電池、電気自動車(EV)など、需要家側の持つ多様なエネルギー源(分散型エネルギーリソース)を活用して電力の需要量も制御し、需要と供給のバランスを取ろうとするしくみです。今回は、このDRが実際にどのようにおこなわれているのか、そしてそれを活用した今後のビジネス像をご紹介しましょう。

2022年夏の電力需給ひっ迫時、DRはどのように活用された?

DRとは、電力を使う私たち需要家側が、その使う量をコントロールすることで、電力需要のパターンを変化させることです。電力の需要が急激に高まり、需給がひっ迫したときや、逆に天候などの影響で発電量が需要量を上回ったときなどに実施され、供給に支障が出ないよう、電力の需給バランスを調整する方法のひとつです。

その際には、需要家側のエネルギーリソースをたばねる「アグリゲーター」が、電力会社と需要家の間に立って、調整役をにないます。

みなさんの記憶にも新しいことと思いますが、猛暑が続いた2022年6月27日~30日、東京エリアで「需給ひっ迫注意報」が発令されました。このとき、電力の需要を抑えるために、DRが実施されました。実際にどのような方法でDRがおこなわれ、どんな効果があったのかを、3つのアグリゲーターの対応事例をもとに見ていきましょう。

① 東京電力エナジーパートナー株式会社の取り組み
6月27日~30日の期間、化学・産業ガスなど主に素材系メーカーを中心とした約300件を対象に、昼と夜とに分けて電力需要の抑制(下げDR)を要請しました。その結果、最大約33万kW(推定値)の電力需要の調整がおこなわれ、需給バランスの確保に貢献しました。

② 株式会社エネットの取り組み
同社では約6000施設の顧客に対して、節電要請に協力すると節電量に応じて電気料金を割引するDRサービスを提供しており、2022年6月の電力需給ひっ迫時にも契約顧客に対して節電を要請しました。その結果、6月27日~30日の9時~20時、東京エリアで合計約23万kWhの需要抑制(下げDR)となり、需給バランスの調整に貢献しました。

DR実施イメージ
株式会社エネットで提供しているディマンド・リスポンスサービスのしくみを図で表しています。

(出典)第52回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会(METI/経済産業省)資料

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③ 株式会社エナリスの取り組み
同社では2021年7月から、需給ひっ迫時に節電要請に協力した事業者に報奨金を支払うDRサービスを開始しており、6月の電力需給ひっ迫時には、全国各地の業務産業用需要家30件ほどに節電を要請しました。その結果、4日間で合計約12.5万kWhの需要抑制(下げDR)となりました。

DR実施イメージ
株式会社エナリスで提供しているディマンド・リスポンスサービスのしくみを図で表しています。

(出典)第52回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会(METI/経済産業省)資料

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さらなる発展が期待される「アグリゲーション・ビジネス」とは

この事例のように、現在、アグリゲーターは電力ひっ迫時に大口需要家の需要を抑制するDRを中心に事業をおこない、その活躍機会が拡大しています。今後、アグリゲーターは電力システムの中で重要な役割をになうことが期待されます。そこで、一定の条件を満たすアグリゲーターは「特定卸供給事業者」として法的に位置づけられ(「『法制度』の観点から考える、電力のレジリエンス ④次世代の電力プラットフォームもにらんだ法改正」参照)、2022年4月から、一定の要件を満たした場合には届出が義務化されました。

アグリゲーターが中心となって、分散型エネルギーリソースを有効活用する「エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス(ERAB)」は、新たなビジネス領域として注目されています。今後のアグリゲーターの役割、また事業の方向性として、具体的には次のようなことが考えられます。

①電力需給ひっ迫時だけでなく、平常時にも、電力需給のために調整力を提供する

これまでは、電力需給ひっ迫時に、大口需要家に対して節電要請をおこなったり、自家発電機の稼働に協力してもらうといったDRが中心でした。今後は、需給ひっ迫時だけでなく、再エネの増加などに伴い必要性が増加する、分単位や秒単位での需給バランスを確保するための調整力を、DRを高度に制御することで提供していくようなビジネスも期待されます。

②「FIP制度」のもとで、再エネ電源をたばねて市場に電力を供給したり、「インバランス」の回避をおこなう(再エネアグリケーション)

2022年4月から「FIP(フィードインプレミアム)制度」が始まり(「再エネを日本の主力エネルギーに!『FIP制度』が2022年4月スタート」参照)、発電事業者は発電量を予測して発電計画を立てることが求められるようになりました。もし、需要量と供給する発電量が一致しなかった場合には、その差分(インバランス)にかかる料金がペナルティとして発生します。太陽光発電や風力発電といった再エネは天候によって発電量が変動するため、発電量の予測はむずかしい作業ですが、FIP制度のもとでは的確な予測が大きな課題となります。

そこで、アグリゲーターが「再エネのアグリゲーション」をおこなうことが考えられます。たとえば、地域に点在する再エネを複数たばねて管理・制御しておくことで、ある地点の天候が悪化し、太陽光などの発電量が急激に減少しても、他の地域の天候が良好であれば、その発電によって急激に減少した地域の発電量を補い、全体の発電量の低下をゆるやかに抑えることができます。これを「ならし効果」とよびます。

また、下の図のように、それぞれの発電リソースの状況に応じて柔軟に発電計画を立てたり、蓄電池などを組み合わせて発電量を補正したりといった技術を活用することで、インバランスを低減させることができます。

さらに、収益を上げるために、卸市場価格の動向を見ながら、蓄電池も活用して、売電のタイミングを適切に判断するといったことも可能です。これらの事業は「再エネアグリケーション」と呼ばれ、今後ますます重要になると考えられます。

アグリゲーションによる収益性向上イメージ
卸市場価格や天候・発電の予測を踏まえて売電タイミングをシフトさせるという、アグリゲーションによる収益性向上の例を図で表しています。

③「地域マイクログリッド」や配電事業での需給調整を支援する

「地域マイクログリッド(大規模停電時には自立して電力を供給できるシステム)」や配電事業の供給区域においても、アグリゲーターが需給調整の支援をおこない、分散型エネルギーリソースによる電力の地産地消に貢献する取り組みが期待されます。

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アグリケーション・ビジネスは、これまでの大規模な発電所に集中していた電力システムから、再エネを中心とした分散型の電力システムへと変わっていくなかで、大きく発展することが期待される分野です。国内で活動するアグリゲーターも着実に増えつつあり、政府もその活動を後押ししていきます。

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省エネルギー・新エネルギー部 新エネルギーシステム課

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